ビジネス
2017/12/28

日本経済復活のカギになるか?内部留保課税の構想とは

(写真=mnimage/Shutterstock.com)
(写真=mnimage/Shutterstock.com)

2012年12月に第2次安倍内閣が発足した頃から日経平均の上昇トレンドが続いており、足元でも日本企業の業績は拡大基調にあります。今なお、安倍政権がデフレからの脱却を目標に掲げているように、少し前まで“失われた20年”とも呼ばれた停滞期が続いていたのが夢だったかのようです。

企業が貯め込んでいるお金を吐き出させるのが狙い

ただ、低迷期に企業は大掛かりなリストラを進めて収益構造を改善し、利益を「内部留保」として蓄えてきました。それに伴って「内部留保」は増加の一途を辿り、2017年9月に財務省が発表した「法人企業統計」によれば、2016年度には406兆2,348億円に達して過去最高となっています。

日本銀行は異次元規模の金融緩和政策を実施してきましたが、企業は設備投資などに対して慎重な姿勢を崩さず、そのために「内部留保」がそこまで拡大したのだともいわれています。また、もはや給与は増えない時代になったと嘆いている人が少なくないように、企業は賃上げについても消極的でした。

約406兆円のうちの一部でも設備投資や賃上げに充てられれば、経済はいっそう活性化し、一般庶民も実感できる景気の拡大期が訪れそうです。そこで、そういったお金の流れを誘うために導入が検討されているのが「内部留保課税」という新たな税金です。

その名の通り、企業の「内部留保」に税金を課すというもので、それを避けるために設備投資や賃上げに資金を回すことを狙っています。しかしながら、現状の構想は根本的な問題を抱えており、乱暴な導入は混乱を招きかねないともいえそうです。

実は、「内部留保」には設備投資で得た資産も含まれている!?

そもそも会計処理上の「内部留保」とは、企業の貸借対照表(バランスシート)において資本金などとともに「資本産の部」として計上されているもので、「利益剰余金」とも呼ばれています。実は、この別称が誤解を招く一因です。

企業は決算の際、獲得した売上から費用を差し引いて、その期における利益を算出。それから法人税などの税金が差し引かれ、正味の儲けである「純利益」が確定します。

この「純利益」の一部が株主に配当として支払われ、残りが「利益剰余金」として社内にプールされていくのですが、すべてが現預金で蓄えられている訳ではありません。企業によって個々に異なるものの、一部は事業に用いる不動産や設備、機器といった実物資産となっている可能性があります。

従って、ひとまとめにして「内部留保」に税金を課すと、企業の設備投資計画にとってはむしろマイナスに作用する恐れが生じます。そればかりか、前述したように法人税を差し引いた後に「内部留保課税」まで徴収すると、いわゆる二重課税となってしまいます。

「内部留保課税」の賃上げ効果にも疑問符が!

加えて、賃上げを促す効果についても懐疑的な意見が少なからず出ています。留保金課税の税金対策をするために、会社が賃料アップを図ることは構想の意図通りであり、サラリーマンにとってはグッドニュースです。企業が賃上げによって人件費を増やせば、その分だけ税引前利益(課税対象となる利益)と「純利益」は減ります。

それに伴って法人税と「内部留保課税」も安くなるでしょうが、利益が減ることは企業にとってまさに死活問題です。上場企業であれば、どのような理由であれ減益は株主からの批判の対象となってきます。しかも、固定給を引き上げたとしたら、経営的に困窮しても労働組合が納得しない限り、その後に引き下げるのはたやすくありません。

こうしたことから、現状レベルの構想で「内部留保課税」を導入しても、期待しているほどの効果が得られない可能性が高いかもしれません。その一方で企業が過度に現預金を貯め込んでいるのも事実でしょう。

経済のグローバル化が進んで今まで以上に先行きを読みづらくなっており、概して企業は過剰な設備や在庫をできるだけ抱えないように努めています。“失われた20年”では貸し渋りや貸し剥がしといった行為も横行しただけに、いざという場面で銀行が融資に応じてくれないことも危惧しているようです。

そういった経営陣の心理面も踏まえた上でさらに議論を進め、「内部留保」に貯まっている現預金を動かす仕掛けを講じることが求められています。

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